いぜん続くフッ素論争

安全性・有効性めぐりホットな論争つづく
 むし歯予防のフッ素応用をめぐって続いてきたフッ素論争はなお続いています。
最近でもアメリカ化学学会の特別報告『プリニウスの迷信−荒れ狂うフッ素論争−』(績文堂刊1989)
や、東山書房『健康教室』では1996年3月号〜6月号に推進の立場から、7月号〜10月号に反対の
立場からの記事が掲載されています。一方、高橋晄正さん(元東京大学医学部講師・医学博士)らが発刊した
『あぶない!フッ素によるむし歯予防Q&A』では、最近のWHOやアメリカのアド・ホックレポートなどを
紹介し解説しました。これに対して推進グループが反論、またそれに対して再反論が発表されるという形で、
まさに安全性や有効性をめぐってホットな論争が続いています。

  [論争点の整理に引用したフッ素反対派・推進派の冊子・パンフ等]
【反対派の主張】 『あぶない!フッ素によるむし歯予防Q&A』
(高橋晄正・編著。1995年・労働教育センター)
【推進派の反論】 『う蝕予防に用いるフッ化物を正しく理解するために〜最近の反対意見に対する解説』
(日本むし歯予防フッ素推進会議事務局。1996年)
【反対派の再反論】『フッ素研究bP6』(日本フッ素研究会。1996年)他
 
@ フッ素の安全性は確立しているか
【反対派】アド・ホックレポ
ートは生殖毒性や遺伝毒性、
発がんなどの研究をすすめる
よう勧告している。それはフ
ッ素の安全性が確立していな
いことを示している。
【推進派】同レポートはフッ
化物利用を推奨している。研
究の蓄積を継続せよというこ
とであり、フッ素の危険性を
認めたという意味ではない。
 
【反対派】フッ素利用の前提
として、科学的な安全性が確
認されなければならないこと
は常識である。

 
 
A フッ素塗布を限定する必要があるか
【反対派】WHOレポートは
フッ素塗布を2つの場合だけ
に限定し使用されるとしてい
る。
【推進派】フッ素応用の乏し
い我が国においては、応用の
適用を特に限定する必要はな
い。
【反対派】推進グループはW
HOが2つの場合に限定した
理由を無視している。
 
 
B 6歳未満はフッ素洗口を禁止すべきか
【反対派】WHOレポートは
フッ素洗口は6歳未満の子に
は禁忌=絶対禁止であるとし
ている。
 
【推進派】レポートのバック
グラウンドを考慮する必要が
ある。フッ素の全身応用がな
されていない地域(日本を含
む)は当てはまらない。
【反対派】それは推進したい
がためのこじつけである。日
本ではフッ素摂取量がアメリ
カの2倍であることをなぜ問
題にしないのか。
C フッ素入り歯みがき剤の規制は必要か
【反対派】アメリカやカナダ
では水道水フッ素化されてい
ない地域も含め、全国一律に
フッ素入り歯みがき剤の規制
をはじめた。
【推進派】水道水フッ素化の
地域で歯牙フッ素症の発現が
危惧されるためである。日本
は全身応用がされていないの
で、そのまま適用されない。
【反対派】ダウン症や骨折を
考える医学的立場からは、フ
ッ素入り歯みがき剤も使用す
べきでない。
 
 
D 胃の中でフッ化水素(HF)に変化した影響は
【反対派】胃の中に入ったフ
ッ素は胃酸(塩酸)と反応し
て猛毒のフッ化水素(HF)
となり、超スピードで胃粘膜
から吸収され全身を巡る。

 
【推進派】HFの生成が重大
な障害を及ぼすと言っている
わけではない。フッ素の見込
み中毒量はフッ素量5mg/Kg
(体重)とされており、一度
に大量のフッ素を飲用しない
限り急性中毒は起こらない。
【反対派】推進グループは公
害のフッ素=HFとむし歯予
防のフッ素=NaFは違うと
言ってきたが、それがまちが
いであることを認めた。HF
が危険な毒物であることも認
めるべきだ。
 
E 血中フッ素濃度と低カルシウム症の関係は
【反対派】血中フッ素濃度が
著しく高くなると、カルシウ
ムが著しく欠乏し生命の危険
に陥れることが報告されてき
ている。
【推進派】フッ素洗口に使う
量で「テタニー症状」(カル
シウム欠乏による特殊なけい
れん)を起こすことはあり得
ない。
【反対派】フッ素は血中のカ
ルシウムを奪う。不足は骨の
カルシウムが溶けて補う。長
期のフッ素応用は骨粗しょう
症や骨折の増加につながる。
 
F フッ素はエナメル質を破壊するか
【反対派】高濃度のフッ素洗
口液(500ppmF以上)で
フッ素は歯のエナメル質のア
パタイト(結晶)を破壊する。
【推進派】「500ppmF
以下なら破壊されない」と書
いているだけである。
 
【反対派】詭弁である。週1
回900ppm洗口や900
0ppm塗布はただちにやめ
るべきである。
 
G フッ素により骨折は増加するか
【反対派】飲料水中のフッ素
濃度が高い地域では、若年層
の骨折が発生しやすく、骨皮
質欠損等の骨異常が増大する。 高年齢の腰部骨折も増大する。
【推進派】研究結果の都合の
よい部分だけを抜き出したも
ので骨折の発生が高まるとい
うことはない。
 
【反対派】フッ素地帯の骨の
検査では、骨の発育不全とフ
ッ化カルシウムの沈着が著明
であることを知っていない。
 
 
H フッ素によりがん(骨肉腫)は発生するか
【反対派】フッ素と骨肉腫の
疫学的研究を進める。

 
【推進派】最近の研究からフ
ッ素が骨肉腫のリスクを増加
させるという仮説を支持する
事実はない。
【反対派】データによればフ
ッ素化地域の発生率は、非フ
ッ素化地域の3.4倍である
という。
I フッ素によりダウン症は増加するか
【反対派】29歳以下の若い
母親のダウン症の発生率は水
道水フッ素化の地域が高い。

 
【推進派】その研究は、フッ
素の添加とダウン症の発生率
は関係がないという結論であ
る。
 
【反対派】高齢出産を含めた
母親の全年齢を平均値に使う
のはナンセンス。若い母親層
はフッ素化地域でダウン症の
発生率が明らかに高い。
 
J 日本人はフッ素を取りすぎているか
【反対派】日本を含むアジア
地域は、食生活の違いから欧
米諸国より2倍以上のフッ素
を摂取している。アド・ホッ
クレポートの「すべての摂取
源からの総フッ素曝露量の至
適レベル」を検討せよ、とい
う提言をなぜ無視するのか。
【推進派】これまでの調査か
らとくに日本が多いとは思わ
れない。
(注:推進学者の高江洲氏は
「わが国では海産物を多く摂
取するため2倍近くになる」
と認めている。)
 
【反対派】両者共通のデータ
によれば、1.7倍から2.
7倍日本がアメリカより高い
ことを示している。自分勝手
な調査の主張である。


 
 
K 中国広州市の水道水フッ素化の中止の理由は何か
【反対派】中国広州市で水道
水のフッ素添加を中止したの
は、多数の歯牙フッ素症(斑
状歯)の発生による。

 
【推進派】歯牙フッ素症の発
生は、フッ素添加の技術的コ
ントロールミスによる。


 
【反対派】広州市では斑状歯
が25%から80%に達した
という報告もある。コントロ
ールミスでそんなことはあり
得ない。責任者がはっきりと
否定している。
 
L フッ素は必須栄養素か
【反対派】アド・ホックレポ
ートは「フッ素が必須栄養素
である決定的な証拠は存在し
ない」と、必須栄養素論をく
つがえした。

 
【推進派】アド・ホックレポ
ートは、必須栄養素でないと
いう根拠を示していない。



 
【反対派】アド・ホックレポ
ートは、人間の成長と健康に
とって、どれくらい必須なの
か明示できずに、人間栄養学
からの反論に耐えきれなかっ
た。フッ素欠乏症は世界で一
例の報告もない。
 
M フッ素の急性中毒量はどれくらいか
【反対派】アラスカでのフッ
素事故により急性症状を起こ
した推定最小摂取量は0.3
mg/Kg(体重)であり、
推進派主張の約7分の1であ
る。
【推進派】あくまでも推定で
あり、従来の急性中毒量(2
mg/Kg(体重))を再検
討する情報はない。

 
【反対派】中毒量は人体実験
できない。中毒事故から推定
して改めるのが常識。アラス
カ州報告は政府への正式文書
である。
 
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