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  会 報 紙 第42号 2000年7月5日発行
フッ素を考える新潟連絡会


集団フッ素洗口の法的問題点
 
        
        
私的覚え    

1 集団フッ素洗口の実際
 
 
  新潟県行政などが発行する「フッ素洗口の手引」(1994.3、最新版)をもとに、「新潟県下で広く普及している(試薬)フッ化ナトリウム溶液を用いて洗口する方法」から流れを追ってみます。最近の集団フッ素洗口(以下、集団洗口)の実施は、予算化がまず行政→議会ルートで政治的に謀られることが多いのです。その圧力があるとはいえ洗口実施の諾否は、校長の判断と実施決定が法律上の主体として(教育委員会とともに)責任を負わせているのです。    
@ 校長は、学校保健法2条[学校保健安全計画]に基づき、学校での集団洗口実施を決定する。                             
A 校長は、洗口を実施するかしないかは個人の任意であることから、洗口実施の「希望(同意)書」を保護者から取ります。(注、市町村長に提出するところもあります。) 
B 校長は、集団実施するために洗口剤を入手すべく学校歯科医に文書等で伝達(市町村教委が代行することもある)。 
C 学校歯科医は自ら調剤する場合は、校長に対して希釈と用法に関する「指示書」を発行する。学校薬剤師が調剤する場合は、学校歯科医がフッ化ナトリウムの調剤「指示書」を発行する。                            
D 養護教員等が、分包されたフッ化ナトリウムをポリタンクの中で水道水を入れて希釈する。それを、クラスのごとにポリ製分注びんに小分けする。        
E 各クラスの係り児童生徒が、分注びんから洗口実施者のコップに定量分け与える。

2 法的問題点
 

 厚生省は[@ フッ素洗口は自傷行為である A 洗口剤は侵襲性がある]との見解です。

第一点、大前提は集団洗口の洗口剤に「試薬フッ化ナトリウム」か「一般医薬品」(劇薬)のどちらを使用するかの問題です。

 ・ 試薬使用は、学校という公的機関が医薬品でもなく、身体を侵襲する劇物を「自傷行為」用に投与することが、如何なる法律上の根拠の下で認められるのか明確ではありません。

第二点、厚生省の「自傷行為」論に立てば、集団で行う自傷行為のフッ素洗口を学校という公的機関と公務員である教員が幇助(ほうじょ)することが許される問題かです。

 ・ 自傷行為とは、例えば自殺や「根性焼き」などのことでしょう。その時、教員らがそばで刃物や首吊りようの縄、ロウソクやマッチを手渡す行為(幇助)が許される事柄でしょうか。フッ素洗口が一因となって斑状歯や身体の変調(損傷)が生じた場合、刑法の傷害罪に当たらないでしょうか。大いに問題がある点です。

第三点、身体を侵襲する洗口剤投与が、学校保健法2条のみを根拠法として可能だとする主張が、法理論上成立するでしょうか。

第四点、洗口剤配布ルートは、歯科医師・薬剤師が行っています。両者の業務は、歯科医師法、薬剤師法、薬事法など関係諸法律に基づく(規制を受ける)業務であるのか、ないのかです。
 
 ◎ 歯科医師と薬剤士の「関係がない」業務であるなら、誰もが勝手に洗口剤(試薬を含む)を学校等に持ち込んで良い事になります。                
 ◎ 免許資格を有する者によって行われなければならない業務であるならば(新潟県はこの見解)、当然業務上の法律尊守が義務付けられます。            
  ・ 歯科医師による「指示書」は、無診察治療による発給であり、歯科医師法20・21条違反です。
  ・ 薬剤師による調剤は、薬剤師法第24条[処方せん中の疑義]、25条[調剤された薬剤の表示]に抵触する恐れがあります。

第五点、試薬フッ化ナトリウムは、研究・実験に使用されることを目的として販売されている劇物です。この劇物がフッ素洗口剤として人体に投与される目的外使用の事実は、PL(製造物責任)法に明らかに違反します。

  ・ 試薬フッ化ナトリウム製造販売企業は、と述べています。     

3 如何にして、試薬が医薬品に化けるか
 

 新潟県は、試薬フッ化ナトリウムはミラノール等の医薬品と主成分が同じであるから問 題はない希釈すれば普通薬であると主張します。
 医薬品ではない試薬フッ化ナトリウムが、どこでの段階(行為)で一般医薬品(普通薬)としての洗口剤に転化するのかです。「試薬」でしかない(製造専用医薬品でない)フッ化ナトリウムから、劇薬医薬品洗口剤を製造する承認を得ているのかが問われなければなりません。                             
 このカラクリは、前節の(4)と(5)の行為にあります。校長の洗口実施の意向を受けた学校歯科医が、試薬を洗口剤として使用するとの「指示書」を出した段階で「劇薬の医薬品」に化けるのです。または、歯科医師が薬剤師と組んで試薬を調剤し1回毎の洗口剤に分包することで「劇薬の医薬品」にすり替えられるのです。ラベルの張り替えを行ったに過ぎません。そして、養護教員等がこの「劇薬」を指示書に従って希釈(調剤)行為を行ったとき、「劇薬」は「普通薬」となる手法なのです。
 これは、裏社会の不正な金を銀行等を通じて洗浄し,きれいなお金に換えるマネダリング行為と手法そのものです。この手法を使えば、あらゆる医薬品がことも簡単に製造することが可能となります。薬事法の根底が筒抜けとなり有名無実化してしまいます。医薬品製造の厳格な承認手続きは、ずべて無視される事態が30年以上前から新潟県を始め全国で行われているのが実際なのです。薬務行政を取り仕切る厚生省は、この事態を(実施自治体の問題だと)放置することで、生じるリスクと被害への責任を回避しているのです。エイズ被害の教訓は生かされていません。                                    

4 フッ素応用は、人体実験である
 
 
 集団洗口の新潟県モデルは、これまでに全国にその手法を含めて波及しています。試薬フッ化ナトリウムを医薬品と詐称し、子ども達の全身に投与しているのです。フッ素の医学上のリスク問題と共に、新潟県方式の法律上の違法性を明らかにすることが緊急の課題となっています。
 結論から言えば、集団洗口は「調剤された薬剤」による違法な「治験」である。
 一般の我々に分かり易く言えば、臨床試験であり、違法な方法で人体実験が繰り返され 実施されていることなのです。


 
 
(1) 試験研究と臨床試験の人体実験の推移

@ 集団洗口が新潟県で大規模に実施されるに至ったきっかけは、新潟大学歯学部予防歯科学(堀井欣一)教室での境脩助教授(現福岡歯科大教授)の研究に始まります。彼は、1969年新潟県南魚沼郡塩沢町塩沢小学校でフッ素洗口の実験を開始します。1970−71年の2年間、西蒲原郡弥彦村弥彦小学校(週1回法、1,000ppm)での実験結果を持って、虫歯予防に大きな効果があったと宣伝し、全県での洗口実施校拡大に動きます。  
A 境氏らの最終目的は、水道水にフッ素を添加することです。74年、新潟市と新潟県の議員らに働きかけ、議会に「要望書・請願書」を提出し全会一致の採択に成功します。 しかし、彼らの目論見は、消費者団体、労働組合、市民の大規模な反対運動に遭遇し頓挫します。
  翌75年、新潟県教育委員会の「洗口積極推進通知」を引き出すのですが、水道水フッ素化に破れた彼らは方針転換を図ります。フッ素洗口拡大は「水道水フッ素化への次善の策・一里塚」と総括し、堀井教室の総力を挙げて行政と各学校等に猛烈な働きかけに転じます。その推移は、74年6月24施設2,100人、75年6月210施設37,726人、76年6月307施設50,245人への急激な増加です。この洗口拡大推進運動に押されて県行政は、フッ素洗口実施市町村に補助金制度を制定します。この段階で集団洗口は、臨床 試験・人体実験の様相を帯びるに至りました。
B 行政(政治)は、重大な被害が続発しない限り、施策の改廃に同意しません。新潟県では、「むし歯半減10ヵ年計画(1981−90年)」「ヘルシースマイルプラン2000(1991−00年)」が打ち出され、集団洗口が山間部から次々と実施されていきました。
C 81年以降、県のデータは予防歯科教室のコンピュータと直結し、数値の独占的利用
による彼らの根拠付けをバックアップしたのです。そればかりかデータには、洗口実施への協力度合いが校長・養護教員等別にマークされてインプットされ、洗口の賛否をキリシタンの踏み絵にしたのです。
D この20年間、彼らが新潟県内での洗口実施校完全制覇を狙うと同時に、全国での影響力増大を目指しました。彼らの調査に寄れば1998年3月段階で、全国での洗口施設 数;1,934、洗口人数;219,941人と報告しています。
 
(2) 認められた人体実験と違法な人体実験

 違法な人体実験の理由の第一は次の点です。
 医薬品製造のために法律的に認められた人体実験は、薬事法によって厳格な規制の下で「人権の擁護と安全の確保」がなされなければならないとされています。ところが、試薬フッ化ナトリウムで行われているむし歯予防の洗口剤は、法律が一切無視されたまま、薬事法の埒外で一部の学者の効能効果ありとの主張のみで、医薬品として法的に認められていない研究用の試薬、劇物が幼い子供達の身体に投与され続けているのです。
 第二点は、塩沢小と弥彦小でのフッ素洗口は、新潟大予防歯科のあやふやな理論と法律上の要件を満たさない単なる研究を目的としたもの、またそれすらも無視した劇物の投与ですから二重に違法な人体実験であったのです。弥彦小での成績は、二重に違法な手段と方法で得たものですから、予防を含む医療行為の適格性を示す成績(効能効果)の価値はありません。

医薬品と試薬の相違

   用 量 用 法
 
 医薬品;ミラノール  1)  試薬;フッ化ナトリウム 2)

フッ化ナトリウム
フッ素濃度
用法(学校・園の場合)
洗口方法(時間)
(うがいの方法)

使用取り扱い上の注意副作用

0.1〜0.05%
450〜225ppm
一日1回(週5回)
30秒
燕下を避ける目的で、下を向くようにブクブクする
本剤は劇薬、指定医薬品
過敏症(現れたら直ちに中止)
 
0.2〜0.05%
900〜225ppm
週1、2~3、5回法
1分間
まっすぐ前を向いて

劇物
一切リスクなし
1)「う蝕予防 ミラノール説明書」(株ビーブランド・メディコ・デンタル)より作成
2)「フッ素洗口の手引(第6版)」新潟県・他、1994.3より作成
 
 第三点は、 新潟県行政は、境らの違法な人体実験の結果を持って「安全・有効」を主張し、医薬品(当時発売されていたミラノール)使用を拒否して試薬での集団洗口実施を政治的に強要してきたのです。現在までに全国で、洗口実施者は、累積人数300-350万人を下らないでしょう。疫学調査も追跡調査も、試薬の安全性も薬効再評価すら何ら法的に規制・監督されないまま、そもそも何ら実施されずに現在にあります。治外法権の下で行われている集団洗口は、違法な集団人体実験以外の何者でもありません。

 第四点は、医薬品の洗口剤に認可されている使用条件と試薬フッ化ナトリウムによる集団洗口の使用条件が異なっています。括弧内認可洗口剤の条件と比較すると、単純に10 倍以上の危険度で試薬が使用されていることになります。濃度;900ppm(450ppm)、回数;週1回法(毎日法:週7日)、時間;1分間(30秒間)、洗口の仕方;真っ直ぐ前を向いて(下を向いて)などのように、余りにも問題が多すぎるのです。

5 今後の課題
 
 
 もとより私達は、法律を専門的に扱うものではありません。法理論・裁判上の論理の組立は、弁護士等その道のプロとの協議を待たなければなりません。フッ素応用の医学的なリスクが確実な証拠(事実)を突きつけているとき、推進派の主張する「公共の福祉論=人権の制限」論をうち破る法律上の検討が欠かせないのです。これらの作業は、決して個人の手に任せられるものではなく、市民・消費者・学者等の広い視野と運動の中から築かれるものだからです。                      (文責:N.A)
 
<以上>
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