1991年 | 最近の研究動向(横山真一、『自由民権』6町田市立自由民権資料館紀要) 新潟県の自由民権研究は、江村栄一氏の『自由民権革命の研究』、『新潟県史』の刊行で、現在の研究の到達点が示されたいえよう。県内の民権運動の流れがはっきりした以上、今後はさまざまな視点からの民権運動像の解明が必要になってくるものと思われる。このような中で、町史の編纂を通じて新しい研究の動きが始まった。一つは『黒埼町史』の調査過程で、県下の代表的な民権家である山際七司の文書の全容が明らかになったことである。山際文書はこれまで江村栄一氏、山名正平氏が調査されており、未調査のものではなかったが、門外不出の史料としてなかなかその全容を掴むことができなかった。しかし御当主山際精爾氏の御厚意で閲覧が許可され、その全貌が明らかになった。約四八00点余ある文書の特徴は、膨大な書翰と明治八年から亡くなる二三まで続く日記である。この文書をどのように見ていくかは今後の作業になるが、町史では現在県下の研究者四名で解読にあたっており、平成七年度までに山際文書の史料集を刊行する計画である。ちなみに今年は、山際七司没後百年にあたっている。 さてもう一つの動きが、『吉川町史』でやはり県下の代表的な民権家である鈴木昌司の文書を整理し直していることである。この文書も未調査のものではなく、江村氏によって紹介されているが、町史の編纂を期に整理し直し目録の作成を行っている。文書の特徴は、明治一〇年代の民権関係の史料が残っておらず二〇年代の書翰がまとまって残っている点にある。なぜ一〇年代の史料がないのか疑問の残るところであるが、二〇年代の書翰、地元の未発掘の史料、または先の山際文書、立教大学の小柳卯三郎文書、西潟為蔵文書を合わせることによって、文書が不毛な上越地方の民権運動が明らかにできるものと思われる。 まさに県下の民権研究もこれからじっくりと腰を落ち着かせて行われる必要がある。 |