第14回睡眠呼吸障害研究会抄録

      

人工顎関節置換により治療した小下顎症による
睡眠時無呼吸症候群の一例

    

新潟大学(歯) 第1口腔外科、第1補綴科*
○河野正己, 米沢雅裕, 泉健次, 小林正治, 中島民雄, 小林博*,河野正司*
 同 (医) 耳鼻科(現 藤岡医院(川崎))藤岡 治
 同 (医) 第2内科 大平徹郎, 佐藤 誠, 荒川正昭


   睡眠呼吸障害の手術療法を歴史的に分類すると、上気道をバイパスする気管切開術
   は第一世代、咽頭気道の軟組織を拡大するUPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)などは
   第二世代、そして上下顎前方移動術のように硬組織を移動させて咽頭気道の
   フレームワークを拡大する手術は第三世代となる。
   今回はこの第三世代の通常の手術ができない顎関節の破壊性疾患に対して、人工顎
   関節を用いて両側顎関節同時全置換術を施行して良好な結果を得たので報告する。
   症例: 細○真○ 12才 男児
   主訴: 永久気管孔を閉じたい
   現病歴:出生時、Pierre-Robin症候群と診断され、呼吸管理のため気管切開を受
   け、以後某大学耳鼻科にて管理を受けていた。1992年に某病院口腔外科にて両側顎
   関節に軟骨付き肋骨を移植され25mmの開口度を得たが、気管孔は閉鎖できなかっ
   た。その後、軟骨付き肋骨は圧に耐えられずに潰れて再度開口障害を生じたため当科
   へ紹介された。
   経過: 術前の睡眠呼吸検査では、気切を閉鎖するとAHI:65.8(AI:31.4),
   3%DI:20.7, lowest SpO2:64%であった。両側顎関節全置換術を左右同時に施行
   し、UPPPも併せて行ったところ、退院時にはAHI:1.6 (AI:0.6), 3%DI:2.1,
   lowest SpO2:81%と著しく改善した。
   考察: 人工顎関節置換術はリウマチなどの顎関節破壊性疾患に起因する睡眠呼吸障害
   の治療に有効と思われた。

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