最新の研究成果

 1993年より口腔外科疾患や手術に関する睡眠呼吸障害の発生状況を検討するため
通常の睡眠ポリグラフィーができない小児や術後患者でも容易に睡眠呼吸検査を行える
睡眠オキシメトリー法を開発し,第22回日歯麻総会(1994)のフォーラムで報告
した.この検査の測定項目で90%時間比はアプノモニターやスリープトレースの無呼
吸(低換気)指数と強い相関があった.そこで肥満,慢性的ないびき,扁桃肥大のない
呼吸機能,鼻腔通気度ともに正常な者より
同検査法の正常値を導いた.1994年には
この検査法を用いて口腔外科関連の睡眠呼吸障害の発生を調査したところ口腔外科疾患
では下顎後退症,クルゾン症候群,ピエールロバン症候群に,手術等では下顎後退術、
口蓋形成術,顎間固定術に高頻度で閉塞型の睡眠呼吸障害が見つかり、詳細を第39回
39回日口外総会(1994)で報告した.一方,このような疾患等の気道閉塞のメカ
ニズムを探るために咽頭気道の形態分析を行った.形態分析には基礎研究にて撮影法を
確立した咽頭造影側方セファログラムを用いた.
そして,睡眠呼吸障害の治療対象となった25例で睡眠呼吸障害の重症度と咽頭気道形
態の8項目の多変量解析を行い,軟口蓋の過剰,気道狭窄,舌下垂が気道障害の主因と
解明した.さらに重回帰分析にて無呼吸低換気指数の予測式を作りスクリーニングや手
術適応の決定に応用を始めた.そして,この予測式に従い従来治療が不可能であった顎
関節破壊に起因する睡眠呼吸障害に対して,人工顎関節を開発して 欧米には類を見ない
新しい手術法を確立した.

睡眠オキシメトリー法の正常値
最低SpO2:91.7±2.9%
平均SpO2:97.9±0.7%
変動係数:0.8±0.2%
90%時間比:0.004±0.008%
    
90%時間比とは睡眠中のSpO2が90%未満となる時間の全睡眠時間
に対する比率

咽頭造影側方セファログラムの正常値
平均咽頭気道径(meanPAS):15.5±2.9mm
軟口蓋長(PNSU):34.8±3.7mm
軟口蓋過剰量(Excess):7.7±3.7mm
下顎骨舌骨間距離(MP-H):13.6±4.7mm
上顎骨舌骨間距離(PP-H):63.8±2.5mm

無呼吸低換気指数(AHI)の予測式
AHI=1.73×EX.-0.39 (R^2=0.642)
AHI=1.62×EX.+0.98×PPH-74.9 (R^2=0.712)
AHI=1.48×EX.-2.63×mPAS+32.6 (R^2=0.703)
AHI=44.2×mPAS-0.57×AREA+6.39×VAL-4.61×DEPT.+3.58×PNSU
-2.29×EX.+0.86×MPH+1.33×PPH-587.6 (R^2=0.836)

   河野正己(こうのまさき)
   新潟大学歯学部卒(歯科医師)、新潟大学歯学研究科修了(歯学博士)
   日本口腔外科学会認定医、日本歯科麻酔学会認定医
   日本歯科大 いびき診療センター助教授
   こうの歯科医院 いびき症クリニック(副院長、非常勤医)
    前新潟大学歯学部口腔外科講師(イビキ(睡眠呼吸障害)外来担当)

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