論説

NTP(国家毒性プログラム)批判、根本的 再評価草案報告

ロバート J.カートン ワシントン,D.C.アメリカ合衆国 環境保護局(EPA)専門家の委員会の任務として 私は首都ワシントンの1100人の専門家を代表している。 この専門家とは殆どが法律家、 科学者、 そして技術者からなり、 彼らは国家レベルの環境問題の分析と推奨できる解決方法を用意してい る。 我々は取り上げるべき問題とその解決を決定してきた。 EPAは倫理的な思想傾向として望ましい何かを残してきた。 しかし1985年に取り扱ったフッ素の 危険性の評価は、 この点では、 かって無いほどの EPAの科学の乱用を遥かに越えた乱用をおかした。 この科学の乱用に対しての異議申立ての失敗は文官としての我々の義務を回避して国民を欺き (そして国民の健康に害を与え)そして政府の政策に身を売るに等しい事をしてしまった。 このよう な科学の乱用と乱用をつくりあげるメカニズムを暴露することで二度とそのような事が起きない保 証をすることになるはずだ、 合衆国連邦政府職員組合2050支部はこの問題に取り組んでいるのだから。 最新の国家毒性プログラム(NTP) による癌の研究結果は EPAにとって極めて重大である。 そのため 環境保護局は飲料水のフッ素の水質基準を再検討することを決定している。 現在フッ素の水質基準と して(水質汚染の最高限度)は 4mg/l(4ppm)となっている。 EPAは NTPによる研究結果の検討が決着するまでは、 EPAによる再検討を延期することでこの研究が とんでもなく重要だということを示しているように見える。 そして新たにフッ素の危険性と利益の再 検討はアメリカ厚生省の部局によって今年の後半には開始されることになっている。水質基準の再検討 は多分この研究を中心に動き始めるはずだ。 私と水道局の毒性学者主任のウイリアム ・ マーカス博士 はライリイ局長に我々独自での研究結果の分析を許可するよう申し出てきた。 皆様は我々がなぜNTP報 告を議論しなければならないかが分かってもらえるはずである。 NTP報告の概観 「F344/N系統ラットとB6C3F1系統マウスを使ったフッ化ナトリウムの毒性と発癌性の研究」と題され た国家毒性プログラム(NTP)の報告書草稿は1990年4月2日に公表された。 4月26日にはノース・カロライナのトライアングル・パーク研究所でNTP審議会の科学的顧問団の手で 「詳細な検討」 が公的会議としてなされた。 そして最終報告書は今のところ公表されていないままで ある。 この報告書の草稿では 「 (フッ化ナトリウムに) オスのラットで骨肉腫を引き起こすという不確かで はあるが証拠が認められた。 しかしメスのラット、 オス、 メスのマウスではこのような証拠は認められ なかった」 と結論している。 不確かではあるが(equivocal:両義の)という言葉はここではフッ素は癌の 原因に 「なるかもしれない」 という意味で使われている。 詳細な検討をおこなった審議委員が意見の一致したこの結論はそれまでの政府のフッ素は完全に安全で あるという立場からの大きな立場の変化を明らかに表明しているものだ。 この報告書はNTPのスタッフが 作成したのであるから。 しかしこの研究そのものは NTPの依頼でバテレ・コロンビア研究所が実験研究を行ったものである。 バテレ報告は品質保証人によって審査され、 分離した病理学者がスライドを検討している。[NTPの] 科学的顧問団の審議委員はバテレ報告書を検討するために受け取っていないし、 病理学者グループ の討論資料も受け取っていないのだ。 [NTPの]審議委員の毒性学者、 病理学者、 統計学者たちは彼 らの専門的報告書しか検討していないのだ。 しかも彼らはフッ素の文献に通じていないのは明らか なのだ。 この報告書を読んでジョン ・リー博士、ジョン ・イアムイアニス博士、メル・ルーバー博士そして EPAのビル・マーカス博士といった[フッ素の]専門家たちとこの報告書について討論した。 私はこの報告書そのものが研究結果を最小に評価してこれまでの医学会の立場に対して衝撃を最小 にするように企てられた良く出来た代物であるということが分かった。 文献の検討、 実験方法、実験 結果を解析するためのコントロールグループの蓄積データの扱いといった重大な問題ばかりかラット やマウスに見付かった病変が癌病変、前癌病変であるかどうかという重大な問題までもがこの報告書 の草稿では、(バテレ報告書の品質)保証人によって常習的に格下げされているのである。 報告書の読む人を誤りに導く記述 この報告書のなかの最も単純な事実は「日和見学者」に狙いを定めていると見える。 こんな学者はいかに狡猾に立ち回るかを知っている官僚主義者へと方向を変える。 1ぺージの「研究の理論的根拠」の中で次のように述べている。 フッ素に発癌性が有るかもしれないという可能性の重要性は国立癌研究所、環境保護局、国立歯科研究所 を国立毒性プログラムにフッ素を推挙してその研究を促した。 もつともらしく聞こえるが、しかしながら、実は、1977年アメリカ議会の公聴会の要求で気の進まない 政府に無理やりこの研究をするようにさせたのだ。 まず始めに、 私はこの [NTP]の報告書草稿の表題が誤りだということを明らかにしなければならなかっ たのだ。 「F344/N系統のラットとB6C3FI系統のマウスを使ったフッ化ナトリウムの毒性と発癌性に関す るNTP専門的報告書」と呼ばれているが、この報告書は実際には[上記の]ラットとマウスを使った実験と 同じくらいに、一連の [フッ化ナトリウムの]遺伝毒性に関する研究の極めて重大な実験結果が含まれて いる。 しかしこの表題ではこの報告書が2年間に及ぶ動物実験を通じて得られた健全な結果に関してのみのも のであることをそれとなく表しているのだ。 これらの遺伝[毒性]の研究結果を報告書の中では最も軽 く扱い日陰に追いやっている。 79ページの「実験結果」 の章の中では取り上げているのに81ページから 始まる「考察」のなかでは、 その意味するところを十分に論じていない。 最終的には、95ページの「結論」 ではこれらの研究は取り上げられていない。これは全く説明不可能なことである。これらの研究ではフッ 素の暴露と遺伝傷害と関係があることを示している。この研究結果は発癌性の証拠に根拠を与えるもので あるからだ。この研究の主任であるジョン・ブッチャー博士自身ニューヨーク州フッ素化反対連合への手紙 の中でこれらの遺伝[毒性]研究の重要性を指摘している。その手紙の中での彼の結論はNTP報告書の中では 明らかに出来なかったものである。 使いものになる文献の間をぬき足さし足であるくような導入は驚くべきものである。 あなた方は フッ素に関する文献が私の専門分野であるとを考えるでしょう、 私には急ぐときとか用心のために 交渉されるべき権利があると。 この事には深入りしないで、 私は問題となることを少し述べたい。 骨フッ素症に関する議論で、 歩行障害を引き起こす骨フッ素症が毎日20mgのフッ素(毎日体重1kg当 たり0.28mg) のフッ素を摂る人が20才以上になって発症するという記録があることが議論されない ままなのである。 様々な程度の歯のフッ素症を引き起こすフッ素レベルの議論は誤りなのである。 EPAは(1985年5月13日の連邦記録)で中等度そして重症の歯のフッ素症はアメリカ合衆国では 0.7mg/L(0.7ppm)という低濃度で発症すると記録しているのであり、この[NTPの]報告書が述べている 4mg/Lで発症するのではない。 発癌性に関する研究の問題点 ラットとマウスを使った発癌性の研究は十分な数の[実験]動物を使って行われている。 オス、メスそれぞれ100匹の対照群と高投与群そしてオス、メスそれぞれ約70匹を使った 低濃度群、中濃度群からなっている。 (略) (equivocal:両方の意味にとれる(岩波英和大辞典)。equi-‘equal'の意の連結形、 vocalは声の意味で直訳すれば「二つの声」。ラテン語equivocusの、両義の、多義の、 間違いやすい、曖昧な、という意味になる言葉(研究社羅和辞典)からの術語と考えられる) ホームページ目次に戻る フッ素目次に戻る 次へ