ok.p.11
山は答えず
父ちゃんはどこへ
・・・・・・・・・・
土方(出稼ぎ)に行ってまだ掃らんよ
なげつけるようにしてかけて行く子供等の答えが
遠く夕映えの山脈の中へ消えてゆく
黙っておおいかbぶさるような
守門山
遠く突き立つ
魚沼三山
五十町歩に点在する十三戸の開拓部落
くずれかけたカヤ囲いの軒先が
遠い山頂の残雪の光をはね返えしている
あれから二十年
山陵のやせ地には作物は育たなかった
草の根を食った生存の歴史
カネになるはずの桐は伸びたが夢破れて二束三文
杉はまだ小さくて売れず
朽ち果てた共同畜合の屋根には
ペンペン草だけが育ち
短冊の早苗は伸び過ぎて
道の田の
土は渇いてひび割れ
ひび割れて渇く
じいちゃんばあちゃんたちの手と顔のしわ
その光のない眼をはねっ返すように
子供等は
壊れた除草機や油の空缶を引きずり廻し
どろんこになってはいずりまわる
おおいい―
おおいい―
お父よう―
帰って来いよう―
かあちゃんもまだ工事(日雇)に行って帰らんよ
なげつけるようにしてかけて行く子等の答えが
遠く夕映えの山脈の中へ消えて行く
おおいかぶさる
守門山
遠く突き立つ
魚沼三山
山は答えない