ok.p.115

飯場

隙間風が吹き込む 二十畳の部屋に 電気コタッが一個 そこヘニ十人が身を寄せ合っている おれたちはバタリーのにわとりや つぶしの豚ではないのだ 出稼ぎが続く以上 そこが 冬中の生活の場であるならば 現場で冷えきった体を暖める 暖かい晩餐のテーブルがあっても良いはずだ 乾いた魂をいやす 静かな読書室があっても良いはずだ いつでも 妻子を呼び寄せて 水入らずに触れ合える場があっても良いはずだ 出稼ぎが続くかぎり ときどき郷里へ帰って 妻子と触れ合わなければならない そのための有給休暇と旅費が支給されても良いはずだ 人の同情は期待すまい 頼れる者はおれたちだけだ 全国百万の仲間たちよ 国会正門前へ集まって来い 総理大臣を引きずり出せ 労働大臣を引きずり出せ 偉い政治家たちを引きずり出して おれたちの飯場の シメッポイセンベイ蒲団の中へ引っぱり込め そしておれたちが食っている冷えたドンブリ飯を食わせて見ろ 三日と続くまい 搾取の機密室をたたっこわせ! 飯場を人間の生活の場に変えよ!
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