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かあちゃんたち

雪が覆いかぶさる山峡の 魚のうろこのような段乏田にはいつくばって 腐ったわらの匂いをさせている かあちゃんたち 夕飯の済んだ炉端では 工事現場で疲れて来た夫が 斑牛のように横たわっている ピーピー泣きさわぐ子供たちは まるで仔豚だ お前は災難の予告でも受けたかのように 髪をふり乱してわめきたてている 都会のおくさんはいいね 洗濯と炊事だけで忙しいなんて 白いエプロンをしたおくさんはいいね テレビドラマのおくさんはいいね でも だれもおまえたちに答えてくれるものはいない だから黙って重い夜の底の ぬるんだ風呂桶の底へ身をたたむ 起きあがれかあちゃんたち ぬるんだ風呂桶の底から起きあがれ 立ちあがれ かあちゃんたち 腐ったわらのにおいの中から立ちあがれ かあちゃんたち お前たちはもう 不遇の歴史の影でうなだれていてはいけないのだ 明日こそは雲が覆いかぶさる山峡の 山の段々田の畔で叫ぶのだ 手をさしのべれば何時でも答える かあちゃんたちが居る谷のむこうの 峠のむこうの 空のむこうの かあちゃんたちにも聞こえるように叫ぶのだ おれたちにも夢がある 人間のだれもが持っている 夢があると
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