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いい部落
川ぞいに
水害の復旧工事の輸送道路が切られて
少しづつ
堤防の復旧工事が進められている
現場の焼け石に腰をおろして
乾いた空に向って
老人たちは夢を描き祈った
県知事も見に来てくれた
おらが大蔵大臣も秘言をよこして
いい所にしてくれると言って帰った
リャカーしか通らない道だったが
自動車が通るようになると言う
テレビも見られる−電話もついた
水害の復旧工事が終れば
きっといいムラになる
と 老人たちはいう
だがな ジィさまたちよ
昔も
みんな貧しかったが
マチは気の遠くなるほど遠く
炭焼く煙をうたいながら
のんびりくらしてたろ
だがいまはなあ
見ろよ
マチの文化はワラ屋根の中でのさばり
電化生活と機械化農業の召使いになった
父ちゃんたちは出稼ぎに追い出され
雪が消えて
田がひび割れているというのに
まだ帰って来ないじゃないか
老人たちよ堤防の復旧工事が終った明日から
砂利と石ひろだらけの
山脈にへばりついた
魚のうろこのような小さな田の中へ立って何をしようというのか
かつては
黒い俵の宝だった炭焼きも
今
石ころのように
急斜面をころがり落ちている
生活費はころがす雪だるまだ
大蔵大臣たちが
今
何をしようとしているか
老人たちよ知っているのか