p434 表1 フッ化ナトリウムの中毒量 年令 体重 致死量 急性中毒量 病院での 最少中毒量 (才) (kg) (mg NaF) (mg NaF) 治療勧告量 (mg NaF) (mgF/kg) 成人 70.00 2200 550 350 250 70 0.45 16 46.66 1500 365.2 333.3 166 46.66 0.45 12 35.00 1100 275 175 125 35 0.47 8 28.00 880 220 140 100 28 0.36 6 23.33 730 176 126.65 80.7 23.33 0.45 4 17.50 550 136.4 87.5 62 17.50 0.45 3 14.00 440 110 70 50 14 0.45 2 10.00 310 77 50 35 10 0.45 1 5.38 170 41.8 26.9 19 5.38 0.45 (a)(b)2つの値は次の研究に拠る(a)Roberts,G.J.,Dent.(1974),2,183-184; (b)Spoerke,D.G.et al.,J.Fam.Pract.(1980),10,139-140.) フツ素の有害なレベルと致死量に関して,特に子供については、データが不足 しているために定められていない。この問題は論文を書く人々が違った方法で 得られた値を引用するという傾向があるためにさらに複雑になっている。 最近の1982年の英国歯科雑誌のA.J.Duxbury らの評論[30]では、今までさん ざん検討されてきたフツ素の中毒量について、表を作って明らかにしている、 この表では最少致死量と共に、最少中毒症状が起きるレベルと病院での治療の 必要な中毒のレベルを示している。(表 1) 表1からはフツ素含有の虫歯予防剤による急性中毒の危険性は極めて小さい ように見える。しかし、彼らが論評を始めるに当たって、 Duxburyらはフツ素 の過剰摂取による慢性中毒の最も感度のよい指標は‘歯のフツ素症’であると 論評している。これは子供が歯の形成期に中毒量のフツ素に暴露されたときに 起きる、そして歯が生えるまでは目に見えない。歯のフツ素症が何故フツ素の 慢性中毒症の範疇に入れられているかについては、全てがはっきりしているわ けではない、この症状は歯が口の中に生えて来るまで明白なにはならない、し かし、形成中の歯の細胞は中毒量のフツ素を内服すると直ちにダメージを受け ると推定出来る。従って、歯のフツ素症は準臨床のフツ素の急性中毒症状とし て分類出来るかもしれない。 Duxburyらは歯のフツ素症に重要な意味があるという可能性は無視している、 そしてフツ素の急性中毒の起きるのは体重1kg当たり1mgのレベルのフツ 素を内服したときに起きると示唆している(表1の縦の行7と2参照)。 しかし、もし歯のフツ素症を無視しなかったならば、そしてもし少量のフツ素 を内服した場合の血中フツ素濃度の影響を考慮したならばフツ素中毒の可能性 に関しての図式は大変違ったものになるはずだ。 p435 フツ素化されていない地域の血中フツ素濃度の範囲は0.2~1μM/lすなわち 約0.004~0/02ppmFであるということが分かって来た。フツ素化された地域のそ れは1.0~2.0μM/lすなわち0.02~0.05ppmFである[16’31]。 1979年にTavesとGuy32は人の血液中のフッ素濃度と公共水道のフツ素濃度と関 係があるとして、飲料水中のフツ素濃は1.9~5.6ppmの地域の成人の血液中のフ ッ素濃度は1.9~4.2μM/lすなわち0.037~0.09ppmであることを見いだしている。 彼らは、その飲料水中の高濃度のフッ素は望ましくない程度の歯のフッ素症を 生じさせると報告している。このように血中フッ素レベルが 0.08ppmで中等度 から重症の歯のフッ素症の原因になる。 Tavesは1979年33にもフッ素濃度5.6ppm200mlの水の(約1.1mgF)を体重10kgの 子供に内服させたところ結果として10μM/lすなわち0.19ppmFの血中フッ素濃 度のピークを見た、しかも、その血中に現れたフツ素の量は最高値でも内服量 の僅か10%であったと指摘している。 今や中等度から重症の歯のフッ素症が血中フッ素濃度が 0.05~0.1ppmで発症 することが明らかなのである[34]。そして数あるフッ素の汚染源からの数ミリ グラムのフツ素の内服によって血液中のフッ素濃度この程度に達するものであ る。 1979H.C.Hodge[34]は、「この問題の中での歯のフッ素症についての一番 重要で広く無視されている事は、フツ素の毎日の安全な摂取量が設定されてい ないということであり、それは毎日摂取するせいぜい数ミリグラムのフッ素に よって歯に広い範囲の白斑または褐色の着色生じさ、個人的に美的打撃を与え ないといったフッ素の量は定められてこなかった。」ということを認めている。 我々は歯のフッ素症を何かソバカスに似た美的な異常としてしか認めないので あろうか[35]。そして、歯のフッ素症を、形成期の歯の細胞に打撃を与えるレ ベルの血中フッ素濃度は多分他の全身の細胞とその酵素をも危険に陥れるはず であるとして、全身のフツ素中毒症の準臨床的な兆候であるとすることは可能 ではなかろうか。 1979年に KrookとMaylin[36]は家畜のフッ素中毒症での最もその影響を受ける 細胞としてエナメル芽細胞、象牙芽細胞、に加えて歯髄細胞、骨、骨形成細胞、 破骨細胞が含まれることを示した。 1979年に英国歯科医師会の予防歯科委員会は現在の推薦する年令別のフッ素 の補給量を再検討することで一致した、というのは最近の研究の結果、 それま で20才での推薦されていたフッ素の投与レベルは高すぎるということがはっき りとしたからだとしている。 更に最近1981年合衆国も含めて幾つかの国、ノルウエー、デンマーク、カナ ダ、オーストラリアの国立歯科協会は、歯のフッ素症の危険性の故にフッ素の 補給の推薦投与量を下げて来たということが報告されている[5]。 ホームページ目次に戻る フッ素目次に戻る 次へ