p433 1980年にはスゥエーデンの研究者[26]は、体重54kg24才の成人にゲルを使った 処置をしたところ30分後に血液中のフッ素濃度が1ppmに達したと報告している。 (この血中フッ素濃度は腎臓機能をそこなう恐れのあるレベルである)その後 2時間は血液中のフッ素濃度は1ppm以下となり、4時間後には比較的速やかに減 少しその後はゆっくりと減少していった。14時間後の血液中のフッ素濃度は元 のフツ素濃度の約10倍であった。研究者は「この研究での血液中のフッ素濃度 は(1977年にMazzeらが‘麻酔学’に報告した研究)血液から尿中にフツ素が 濃縮される最大濃縮値を換算するための研究によつて得られた値に近い。これ らの結果から、(1979年のW.J.LoecheとT.PinkがIADR Progr.and Abatr. に報 告しているように ) フツ素ゲルの使用は増加している、そして幼児に対して さえ家庭での毎日 2回の応用が推薦されて来ていると言うことを考えると、幼 児へのフツ素の投与量は、最近の実験から明らかになった結果を考慮して議論 しなくてはならない。最後に、この研究は子供についての同様の研究が重要で あることを強調している。」と解説している。 さらに新しい研究[8]、ではゲルによる処置を受けた体重22kgの子供は体重 1kg当たり1.8mgのフツ素を飲み込んでいたという報告もある。この結果では、 血液中のフッ素濃度は76μM/l即ち1.5ppmにまで上昇している。 o チェコスロバキアの研究[27]では、水道水のフッ素化がされていない地域に もかかわらず、6~14才のアルミニウム精錬工場の近くに住む子供達は大気、動 物性食品、野菜から毎日2mg以上のフツ素を摂取しているという報告もある。 アルミニウム精錬工場は現在フツ素ガスの排出と固形廃棄物によって環境全体 を汚染している工場として唯一問題にされている施設である。このような施設 は外に、肥料工場、れんが工場、製鋼所、石炭燃焼施設が含まれる[28]。 フツ素の健康への影響 フツ素に関する科学的知識とフツ素の人間の健康への影響に関する知識は、 かなりのものに見えるが、決して完全ではない。フツ素に関する最近の話題 に包括的な再検討を試みた幾つかの研究があるが、フツ素に関しては、まだ 多くの分野でのさらなる調査研究が必要だと考えられている、例えば (1)フツ素は飲み水、食品、歯科用薬剤、薬物、工業廃棄物、汚染大気か ら摂取される、そしてフツ素の総摂取とはこれらの全部又は幾つかの が組み合わされたものである。従って、人体へのフツ素の総汚染量は 血液の採取によって比較的単純に見積もることは可能に違いない。 しかし、血液中のフッ素濃度についての研究は、最近始まったばかり であり、このような研究は現在では不正確なものという考え方[16]、 そして採血の量が 2ml以上必要だということで、研究は順調に進んで はいない。1977年17にEkstrandは極めて少量のサンプルから高い正確 さでフツ素イオンを分析する方法を述べている。このように、1945 年に初めて水道水のフッ素化が始められ、1960年以来フツ素を使った 歯科用薬剤の使用が増加して来たにもかかわらず、フツ素の摂取の薬 理学に関しての意味のある研究資料が集められるようになったのは、 ほんの最近で、6年ほど前からの事である。 ホームページ目次に戻る フッ素目次に戻る 次へ