ok.p.121

ネオンの向うに

吹雪く故郷のことを思うと 居ても立ってもいられなくなる 殺伐とした 飯場のフトンを抜け出して 街のネオンの中を歩きたくなるのだ 真冬の風に 一つ一つ 消えて行くネオン トバリを降ろした街の中の黒い舗道を ただ一人 コト コト コト コト 怨念を抱いた夢遊病者のように 北からの向い風に 子供たちの笑顔が乗って来る 妻の匂いが乗って来る 腹の底から叫びたくなる オーイー オレダヨー オーイー ネオンの向うの空の彼方の ずっしりと重い雪の下の家の中から 子供たちが出て来て並ぶ うしろから抱きかかえる妻 オーイー オーイー オレダヨー 返るこだまは舗道にぶつかって砕ける
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