ok.p.136 便りもない
炭焼でどんなに疲れていても おれが玄関の戸を開けると 餌を見つけた蛙のように 何もかも放り出してとんで来て おとう オシココイ(相撲)しようと 戸口でかまえる三歳半の長男の顔を見ると 疲れはいっぺんに吹っ飛んでしまうのだが 六歳の長女の道化た仕ぐさを真似て笑いころげるセガレを見ていると どんなに腹立たしい時でも いっぺんに吹飛んでしまうのだが 雪かきに疲れはてた妻は 子供たちが話しかけても返事もものうげにしているかもしれない こんな姿が目の前にちらつく せめて 長女だけでも 元気を出して道化でやって 二人が笑いころげていてくれれば良いが 妻からは便りもない
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