ok.p.152

車窓

車窓をながめていると 泣いてもいないのに いやに涙が流れて来るな 赤城の裾野が あまりにも雄大で無言のまま抱いてくれるからなのか 所々の麦畑だけが あまりにも青いからなのか お前たちのたのんだみやげ おもちゃのおしゃれ道具と 小さなケシゴムと せがれのでっこいテッポーとを 網棚に上げてあると言うのに おとうさんがいないでもげんきで わたしと おとうとと がっこうとほいくえんへかよっています からしんぱいしないでください なんて たどたどしい便りをよこすからだよ そうだった お前の一年生の入学の時 せがれの保育園入園の時も 家に居てやれなかったんだなあ 線路にそった 黒いビルの影の ひっそりとした屋根の上に こいのぼりだけが 五月の光をあびて泳いでいる ひごいにまごいに小さなコイたちが 泳いでいる 泳いでいる 唯こいのぽりだけが泳いでいる 泣いてなんか居ないのにとめどなく流れる涙の中で
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