ok.p.158 みかん
雪に埋れた孤島 ムラの店にはもう みかんは品切れた おれたちの初めての出産 三ケ月目の妻はみかんをほしがった 母は正月用の残りのみかん二個を妻にやって つばをのみ込みながら みかんを食べる嫁を見つめていた 吹雪く孤島 つわりに怯える妻を残して おれは今 出稼ぎの夜汽車に乗った ノドがからからだ 一袋五十円のみかんを買った 十個もある 今私はそれを一人で食べようとしている あんなにみかんをほしがっていた妻 みかんは十個もある おれは今それを一人で食べようとしている みかんは十個もある!
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