ok.p.29

廃虚の中で

春 だが空はまだ 灰色に凍りつき 雪が舞う その山間のムラの 水害の廃虚を 人々は掘りおこす 凍りついた 谷間の朝をうち破って ジャー ヂー と コンクリートミキサーのエンジンがひびく ブルウーン ブルウーン と ブルドーザーのうなりが谷間を圧す 部落中が工事現場だ みんな工事に出ろ 工事に出ない者は病人か片輪者 銭取りだ銭取りだ まだ若者の帰らない谷間のムラは 腰のまがったばあちゃんまでが モッコを背負って銭取りだ 一合の晩酌に ボロ切れのように倒れた老人たちは 明日も又起ち上って 冷たく重い石を抱かなければならない タぐれのコタツの中は もう炭火のぬくもりさえもなく うす暗い電灯の下の窓辺で 放心したような幼子等に カラン コロンと母たちのころがす石のひびきがわびしい
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